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2040年は?
2040年は?
僕がこの仕事を始めたのは1989年。アメリカのグレッグ・レモンが猟銃事故から復活してツールで再び勝ち始めた時だ。
翌90年はイタリア復活となった年で、その先駆けとなったジャンニ・ブーニョがサンレモとジロで勝った。
ただ、レモンもブーニョも強いチームでは走っていなかった。
91年からはミゲル・インドゥラインがツールで5連勝、ジロで2連勝と、一つの時代を築き上げた。タイムトライアルで圧勝してライバルを突き放したが、所属するバネストのチーム力はかなり強かった。ツールにチーム力が大きな影響を与えたのはこのインドゥラインのバネストからで、つまり90年代からだと考えている。
ブーニョは「自分が走っていた頃は力でどうにかなったけど、そのあとからチームの力が問われるようになった」と言っていた。
今現在の自転車はというと、さらにそれが重要になり、チームなしにロードレースは語れなくなった。実際イネオス、UAEなどは非常に強い財力をバックに選手層を厚くして戦果をあげている。

今、終わったばかりの世界選の結果を見ると、そもそも完走者が強豪国の選手だけで、表彰台の3名に至ってはスター選手で占められた。もちろん強豪国ばかりだ。
世界選や五輪は国がチームとなるが、チーム力が成績にそのまま出た。
僕がこの仕事を始めた頃、たとえばメキシコのアルカラ、オーストラリアのアンダーソン、アイルランドのケリーとロウチらが走って素晴らしい成績を出していたが、今、そうした一匹狼はほとんどいない。
例外的に東京五輪ではエクアドルのカラパスがやはり単騎(出場したのは2名)で勝ったが、激しいアップダウンと蒸し暑さが大きく味方した。極端な山岳コースでは選手の脚がモノをいうからだ。
だけど通常のアップダウンコースや平坦では、チーム力が重要なファクターだ。

2040年のプロのロードレースは、おそらくこれがもっと極端になっているだろう。
バジェットの小さいチームは淘汰され、プロチームの年間予算は最低30億〜50億円から。これまで突発的に選手を出してきた国は出走リストからことごとく消える…。
もちろん、自分はこうなることを望んではいないし、30年前の自転車界の方が今よりもずっと好きだ。
だけど本当に世界選や五輪に選手を送り、世界で通用するプロ選手を出したいなら、将来を見据え相当厳しくやっていかないとダメだろう。
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