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理想形を知る必要
理想形を知る必要
サンツアーから始まってスペシャライズドやシマノ、コルナーゴ、チネッリ、ピナレッロ、ミヤタ、カンパニョーロなどなど、メーカーの仕事もずいぶんやったけど、中心はやっぱりエディトリアル、つまり出版関係でした。
掲載された雑誌は1000冊以上でしょうし、国内外の書籍もたくさんあるのだけど、自分が出したのは12冊です。
そのうちの2冊は自転車工房モノです。
当時、日本の雑誌にもイタリア車は数多く紹介されていましたが、書いた人たちが実際に工房に行ったかというと、まあほとんどなかった思います。自分はそういうのが嫌で、アポを自分で電話して取り、足を運びました。

それから12冊ある中の最初に出した本がこれです。
これはイタリアの自転車競技のシステムを文章と写真で紹介したもので、1992年に出版されました。
イタリア自転車連盟の教本がお手本で、これもミラノにある連盟に何度も足を運び、許可を得て出版にこぎ着けました。
6、7歳からレースがあり、プロまでのカテゴリーにおいて、距離やレースの頻度等、事細かに決められています。規則は変わってきましたが、基本的な年齢カテゴリーはこの本が出た30年前と変わっていません。
とにかく、連盟が選手やレースのオーガナイザーをコントロールしているわけです。

一方、日本にこうした大会をコントロールするという哲学は存在しません。
だれがいつどこでなにをやろうが自由なわけです。
もちろんレースをやるのは自由だし、選手にとってもありがたいことです。
だけど、ロードレースにカテゴリーやシーズンというものがある以上、連盟がコントロールしていかないとダメなんですよ。
実際、日本に戻ってまず最初に驚かされたのは、こうしたシステムも哲学も皆無であり、誰も知識がないことでした。
日本でレースをやるのが非常に難しいのは百も承知なんだけど、年齢別に3月にはこの程度、4月にはこの程度という度合いを知らないと、世界に通用する選手が出てくる可能性はまあ限りなく低いと思います。とくにアンダーやエリートに言えるのは、レースの難易度が全体的に低すぎます。
日本の現状を考えると実現するのは非常に難しいことはわかってますけど、上に立つ人が理想の形を知っているのと知らないのでは大違いだと思います。
「今はできないけど、こうしていくのが大事なんだよ」ということを少なくとも皆が知るべきだと思うのです。


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