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ロードレース
ロードレース
家を建てている時に、前を通った近所のおばあさんが
「やっぱり外国に行った人は違うわ」なんて言うから苦笑いするしかなかったんだけど、プロのレースで仕事してきたからわずかだけど貯金ができたわけで、外国に行ったから家の資金ができたわけではない。
ところが日本には、このおばあさんみたいな人が少なくない。なにしろ、自転車レースでうるおう流れをなかなか築けなかったからだ。
イタリア人のアシスタントを連れてジロを取材した時のことだ。たまたまチームと同じホテルで、僕はずっと部屋で仕事をしていたけど、アシスタントがロビーでうろついていたら、チームマネージャーがスポンサーと喋っているところを耳にし、
「口から出てくるのは金の話ばかりで、その単位が数千万円だった」と驚いているのを見て笑ってしまったが、プロレースの世界はそんなものである。ちなみにそのアシスタント、アマ時代に選手生活を経験した。つまりアマとプロの世界は大違いなのだ。
僕は服を買う時、ブランドのロゴやマークが入っているものはまず避ける。金や品物をもらっていないものを着る必要はない。プロの世界に長くいると、そんな考え方になってしまうのだ。
僕はこれまでエディトリアル中心に仕事をやってきたけど、そのほかに自転車メーカー、プロチーム、レースのオーガナイザーなどもあった。たとえばジロやツールからだって金をもらった。ジロを主催している会社からはこれまで何度も呼び出され、日本でのマーケティングを相談されている。さらに海外の連盟もあったし、UCIもあった。彼らはレースで金を生み出し、儲けているのだ。
外国のプロレースのことを日本で書いたり喋ったりしている人たちのなかにも、選手のことにはやたら詳しいが、肝心のプロレースの構造をわかっていない人もいる。
それからレースディレクターという役職が日本にないからわかってもらえないかもしれないけれど、端折って言えば、レースでいちばん偉い人である。僕に言わせれば、彼らはお金のことを常に頭の隅に置いている。じゃないとレースはできない。
ロードレースは金が出ていくのではなく、金を生み出してくれるところだ。それを日本では歴史的にやってこなかった。ヨーロッパではプロのレースはほぼ毎日行われているのだ。
もちろん、それは簡単なことではない。だれもがすぐにできることでは決していないが、現にヨーロッパで自転車レースが100年以上続いているのは金が回っているからである。そうした状況をまずは認識することから始めなければならない。良い選手を出す、出さない、そのかわり金を出してくれ、それはできないなどなど、大会側とチーム側の交渉ごとだってたくさんある。
さらにこれまで実際に現地に出向いてレースのことはもちろん、チーム、監督、コーチ、審判、連盟のことなどを勉強した人が何人いるのだろうか?これらもレースを構成する非常に大事なファクターだ。本場で勉強し、ぜひ日本にフィードバックしてもらいたい。